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その時大学生はヒッチハイクの旅に出た

一年の浪人生活を終え僕は大学に入った。浪人生活頑張ったのかと言われると首を傾げてしまう。だが勉強はあまり集中してできなかったとしても苦労はした。この経験は十分に挫折と呼べるものであったと思う。苦しかった。

この経験で精神的に一皮剥ける事ができたのは確かだった。浪人する前の自分を見つめ直すと、ちゃらんぽらんもいいとこで、何も考えずに遊び狂っていたように思える。浪人生活、いい勉強になった。まあ、社会に出たばかりの今の僕も、まだ何も知らないケツの青いヒヨッ子なんだけども。

とにかく、浪人生活という不安だらけの生活から抜ける事のできた僕は、大学という華やかなイメージのある生活に足を踏み入れた。

東京にあるキャンパスは神奈川の実家から一時間半程かかる場所にある。一人暮らしをしたかったが、東京の家賃が高いため、両親から「家賃は払わない。」ときっぱり言われ、結局実家から通学することになった。

入学式の日に勧誘を受けたバスケサークルに入った。しかし、小学校から高校まで部活のバスケを続けてきた僕は、そのサークルの練習や試合に物足りなさを感じていた。

サークルで次々と増える知り合いと、大人数で飲み会をするのも確かに楽しかった。だが、表面的な付き合いだけの知り合いが増えていく事に疑問を感じてきていた。携帯電話のアドレス帳だけがその数を増やしていく。遊んだりするのはほとんど地元の友人達なのに。。。

苦労してバイトで入った給料が飲み代ですぐになくなっていく事にも徐々に嫌気がさしてきた。そして、僕はサークルに徐々に参加しなくなっていった。

大学の授業はというと、高校の授業とは比べ物にならないほどハイレベルなもので、僕には理解できないものが多く、好きだった教科への興味もどんどん小さくなっていった。

『なんで、こんなにも面倒臭くて、つまらない大学に通ってるんだろう。何か意味あんのかな。』

満員電車を降り、学校に向かい歩いている途中、ふとそんな事を考える事が時々あった。

僕は、毎日満員電車に乗り、理解を超えた授業を受け、たまにサークルに顔を出し、帰ってきてバイトに行く。こんな日々に疲れていた。そして、物足りなさを感じていた。

『何か今までと違う刺激的な事がしたい。それも、他の人がやっていないような事が。』

大学に通いながら、僕はそんな事を考えていた。一年生後期のテスト期間中その想いはどんどん大きいものになっていった。

テストも終わり、久しぶりにその時に付き合っていた彼女と映画でも観ようと、待ち合わせ場所に行った。彼女は僕より先に着いていて、僕を見つけるとなぜか微妙な表情を見せた。理由などその他諸々の事は面倒なのでここでは書かないが、とにかく結果を言うと、ふられた。テストから開放された上に、彼女と遊ぶ時間からも開放されてしまったのだ。まいった。大学の春休みというのは非常に長い。春休み後半に、大学の友達と車の免許の合宿に行くが、それを差し引いても約一ヶ月半近くもある。

それから三週間ほどバイトをしたり、友達との遊んだり、それ以外の時間は家でごろごろするだけの生活をした。しかし、どうも暇な時間が多すぎた。そして、あっという間に時間が過ぎてしまったように感じた。この休みの期間の思い出がほとんどない。まるで、記憶喪失になってしまったようだった。僕は記憶に残るような事をほとんどしていなかったのだ。車の免許合宿まで約3週間、この生活を続けていたら、脳味噌がつんつるてんになって、耳から溶け出してきてしまうような気がした。そして何よりこんなにも長い休みを何もしないでいる事がもったいないと思った。

そんな時、『何か今までと違う刺激的な事がしたい。それも、他の人がやっていないような事が。』とテスト期間中ふと考えた事を思い出した。そして、これを実行するのは今なんじゃないかなと思った。

時間はある。まあ金はあんまりないけど。そうだ、貧乏一人旅をしよう。どうせなら本州を離れたい。僕は生まれてこの方本州からも出た事もなかった。でも、北海道の冬の貧乏旅行はさすがに厳しいだろう。野宿もできないし(貧乏旅行=野宿という方程式がこの時の僕の頭にはあった)。じゃあ、できるだけ暖かい九州かな(非常に単純な考え)。どんな旅行にしようか。そんな事を考えていると、何年か前のあるテレビ番組が頭に浮かんだ。あるお笑い芸人が、ヒッチハイクで世界を旅するといものである。彼らの身に次々と起こる、日常では味わう事のできない多くの出来事は、僕が求めていた<それ>に限りなく近かった。何が起こるかわからないその一日一日は、僕を刺激する事間違いなしという確信に近いものがあった。

そうして、2002年3月1日僕はヒッチハイクの旅に出た。

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